QUENTIN TARANTINO 2016

QUENTIN   TARANTINO  2016

私の映画に最もシニカルな友人は「タランテイーノは最初の仕事に戻った方が良い」(ビデオ店の売り子)などど激しく批判的ですが、新作「ヘイトフル エイト」(15)を見て、うーむ、クエンテインは裸の王様になりつつあるという印象を受けました。
彼の異常なほどの映画好きはよく分かってますが、今度の映画は延々3時間7分、最初は映画音楽演奏のオーバーチュアに始まり、途中でインターミッション(休憩)があり、昔のシネマスコープと言うのか、70ミリのフィルム撮影で、それはそれは凝っているのです。

昔の「クレオパトラ」「ベン ハー」「聖衣」とか「十戒」とか「クオヴァデイス」といった巨大スペクタル時代劇は、それなりにスターがたくさん出てきて、場面転換も多くて、どっしりとした重量感の長編映画を楽しんだものですが、クエンテインのは、お得意のおたくっぽいセリフが飽和状態の内容ですから、華麗な場面を口をあんぐりして観ていたのとは全然違います。

そのキメの細かいフィルムの雪景色や森林の色などの鮮やかさは素晴らしいものの、ほとんどの場面は室内で、それも大男が8人も居ると言う、汗臭そうで、うるさい、立て込んだ大混雑の状況なのですから。
あとの方でチャ二ング テイタムが登場して、9人のナインとなりますが,これはヒミツ。チャニングがタランテイーノの映画に出たい出たいとストーカーのようにせっつくので出演させてあげたという、微笑ましいエピソードも映画の情熱家らしい話でした。

タランテイーノ ファンは絶賛していますが、メジャーの批評家たちはかなり厳しい評を書いています。
ファンたちは場面場面で「あ、これは駅馬車だ!」「真昼の決闘のセリフだ!」などといちいち感動しているようですが、古典西部劇へのオマージュと言っても、オリジナルの彼の脚本が薄っぺらなので、偉大なジョン フォードたちはお墓の中で舌打ちをしているに違いありません。

レギュラーのサミュエル ジャクソンがタランテイーノとの熱い繋がりを見せての独特のセリフなど言うのも、半分ふざけているようで、鬱陶しいですし、何よりも途中で挿入される黒人の彼と白人の兵隊とのエピソードはいくらタランテイーノが黒人組の一人だと言ってもあまりに下品で、下卑た迎合を見せていて、顔を背けたくなります。

おまけにジェニファー ジェイソン リーの紅一点の存在が又、暴力過剰で、平等の精神があるからこそ、これだけ女性をいじめても大丈夫、という腹の中が覗けて、これも下品につきます。

英国人俳優で英国人を演じているテイム ロス と すばしこいウオルトン ゴギンズ が軽いノリで、小癪な男たちを演じて、たまさかの涼風を送ってくれますが、あとはどうも重ったるい、巨大ゴミのような存在でしかありません。

「パルプ フィクション」(94)「イングローリアス バスターズ」(09)「ジャンゴ 繋がれざる者」(12)などは大好きな作品ですが、ここにきて、タランテイーノの品のない過剰を目の当たりにして、ほとんど怒るほどに、非常に残念に思っています。

タランテイーノのファンの方々の反撃、反応をお待ちしています。



2009   INGLOURIUS    BASTERDS(バスターズのスペルをざわと間違えているのが彼の彼たるところです)

2015  HATEFUL EIGHT

長編映画としては8作目なのです。



背が高いので親切にかがんでくれます。残念ながら何を喋っていたのか覚えてません。

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