THOMAS KRETSCHMAN

THOMAS   KRETSCHMAN


「戦場のピアニスト」(02)でエイドリアン ブロデイー扮するユダヤ人のピアニストの弾く曲を物悲しげに聴いていたナチの将校を覚えてますか。戦争ものには必ず良心や芸術を愛する心を持つ敵のリーダー格を入れると悲劇度が増します。敵も人間というバランスを見事に描いていた感動の場面でした。

演じたのはドイツの俳優、トーマス クレッチマンで、彼自身の人生もピアニストに負けない生死を賭けた壮絶なドラマなのです。
1962年9月8日 当時は東ドイツのデッサウに生まれ、水泳選手としてモスクワ五輪に出場したこともあるスポーツマンでした。あの頃のオリンピックは東ドイツの選手の国を上げての猛訓練とメダル獲得数が国威を揚げるPR作戦でしたから、トーマスが受けた訓練やしごきも想像出来ます。
そして翌年19歳で、約100ドルの資金だけを持ってトーマスは陸と川づたいに、ドイツとオーストリアとユーゴースラヴィアとハンガリーの4個の国境を抜けて,西側に亡命し、そのために足の指を凍傷で失ったりもしました。今は整形手術で人工指を付けている由。

西ベルリンに住み、ここで演劇に興味が出て、演劇学校へ。ドイツのテレビに出始め、最初の主演映画が「スターリングラード」(93)です。凍り付くロシアのスターリングラードで崩れて行くドイツ軍をリアルに、無惨に描いた戦争映画の佳作で、最近ロシアが制作した同題の「スターリングラード」(2013)にもトーマスが出ていますが,こちらは大げさで、やたらに爆発シーンがあるなど、乱暴な映画でドイツ版とは雲泥の出来です。

眉目秀麗で、どこかにノスタルジアが漂うトーマスは今までナチの将校役を10本の映画で演じて来たそう。これはもう殆ど、きまり役、はまり役と言えますが、彼自身は
「アイヒマン」(09)で主人公のアドルフ アイヒマンの役を演じた時に
「レイフ ファインズは(英国人だから)ナチの将校の役を精一杯、気迫をこめて演じられたろうが僕の場合は常に澱のような嫌な気分がつきまとう。特にアイヒマンの役は気が重かった。しかし僕なりに俳優としての挑戦として取り組んだ。俳優が仕事だもの。選択の余地はあまり無いからね」
と正直に語っていました。
往年のドイツ人スター、自尊心のかたまりとして知られるクルト ユルゲンスもいかめしいナチの将校を数本で演じてましたっけ。

それにしてもドイツ軍の制服は長所を強調し、短所を隠す最高の威厳を見せるデザインです。ユルゲンスやトーマスのような体格があって、凛々しい男優ですと、逞しさや威厳が数倍になって映えます。背の低いトム クルーズさえ「ワルキューレ」(08)ではとびきりスタイリッシュな貴族出身の大佐でしたし。

と言うわけでトーマスの制服姿の写真を何枚か並べてみました。
アドリアン ブロデイーとは「キングコング」(05)で再び共演、この時は船長の役。
最近はテレビシリーズの「ドラキュラ」(13−_)に、敵役のヴァン ヘルジング役で出ていますし、ドイツ映画にも出ては、美丈夫にして偉丈夫の姿を画面で見せています。














2013 TV「ドラキュラ」




2005「キングコング」

クルト ユルゲンス
レイフ ファインズ 「シンドラーのリスト」
ピーター オトウール「将軍たちの夜」
2002「戦場のピアニスト」

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