PETER O'TOOLE

PETER      O'TOOLE


2013年12月14日に81歳の華麗なスター人生の幕を閉じたピーター オトウール。
思い出しても胸が熱くなる,きらきらとした巨大な存在でした。ブラッド ピットとかジョニー デップ,少し前のロバート レッドフォードやショーン コネリーなどとは全く異なるカリスマ性を持った,シェイクスピアを酔っぱらって引用する古典派のスターでした。
同期のリチャード ハリスやリチャード バートンのように舞台の後に夜明けまで飲み明かし,近ずく女性をたっぷりとエンジョイし,放蕩をしながら,パワフルなパーフォーマンスを見せてしまうエレガントなならず者の魅力に溢れてました。張りのある声で,格調のあるアクセントを行使して、はっきりと発音し,抑揚もドラマティックに、語りだけで,聞いている人を陶然とさせてしまうテクニックも素晴らしいものでした。現代のスターたちのぶつぶつつぶやいては,品性の無いヴォキャブラリーを使う(そしてそれがクールだと思っている)話し方にうんざりしている人もたくさんいます。

彼の事を以前にこのページで書いたような,書いてないような。
かなり前にキネマ旬報の書いたので,それとごっちゃになってしまっているのかもしれませんが、大好きなピーターへの改めての感謝と憧憬の念を込めて,少しだけエピソードを紹介しましょう。


もちろん「アラビアのロレンス」(62)の美しく,強烈な存在感を見せるピーターは壮絶に素敵ですが,「将軍たちの夜」(67)のナチの将軍の役も妙に気になります。英国の俳優は得てして,より面白みがある悪漢を演じたがり、特にナチの将校役をほんもののドイツ人俳優より,格調高く,あるときは卑劣に,不気味に演じ上げます。
この映画でのピーターは,異常性,猟奇性,虚栄心と優越感と言うナチのシンボルのような性格をヴィヴィッドに見せ,ホラー映画の域にしてしまったような。

実は彼には3回程会見して,色々な話を聞いていますが,自伝を書く時,ヒットラーの写真をデスクに置いて,発奮しながら書いた,自分はどこかにナチとの類似性を見た,てな発言をしているのです。こう言うコメントはアメリカでは絶対にしません。ハリウッドもマスコミもユダヤ系に溢れ帰って,ナチシンパなどと一言でも冗談でも言おうものなら,即刻ボイコットですから。
ピーターは,英国人のナチ嫌い,ドイツ人嫌いを百も承知で,露悪的に大げさに劇的に仕立て上げたのではないかとわたくしは考えます。「ロード ジム」(65)も不思議な人物を演じて。それが又非常に魅力的ですし,「チップス先生さようなら」(69)のパブリックスクールの引退する教師の話は思い出しても涙が出ます。「カリギュラ」(79)を見に行ったときは,前宣伝のエログロ要素を用心して,かなりのシーンで目を背けましたが,妙に印象に残っています。
「スタントマン」(80)や「マイ フェイヴァリット イヤー」(82)での映画界の裏話と後者では,エロール フリンのパロデイーのスターぶりがとびきり愉快でした。

歳を取ってからの映画は,見ていて辛くてあまり好きではありません。
75年頃に腹部の悪性腫瘍で死ぬのは時間の問題と言われたものの、奇跡的に復活しましたが,長年のアルコール中毒や乱暴な生活のために,あの透き通る青い眼やノーブルなルックスが,かなり褪せてしまって、ちと病的な面が強調されて来たようだからです。例えばリチャード バートンやジーン ハックマンのような最初からあまり美形でないスターが老人になるのは許せても,タイロン パワーやジェラール フィリップのような美男子の崩れたルックスは見たくないのです。

ですから、「トロイ」(04)や「ヴィーナス」(06)での演技が評価されてますが,わたくすは目をそらすばかりでした。
永遠にアイリッシュのピーターは,英国女王からの騎士の称号は受けられませんが,それでもいたずらっぽく「ロード(卿)と呼ばれるのも悪くはないね」と言ったり,どんなフォーマルな服のときでも緑色のソックスをはいていたとか。

天国だか,大好きだと言う煙が充満した暗い場所でムフフとほくそ笑みながら,グラスを傾けて、下界の人々を眺めている事でしょう。


2004  「トロイ」

Comments

Popular posts from this blog

IGGY POP

DEVON AOKI

ADAM LAMBERT